燻製:ベーコンとハム

ここ20年ほどベーコンやハムを作ってます。
肉は白金豚、香味野菜は畑で採れたセロリ・タマネギ・ローリエ。
自作したのを食っちゃうと、もう作らないわけにはいかなくて。
時間も手間もかかるけど、作る価値はあります。

肉の旨さは、低温加熱だと「危険&おいしい」です。高温にすると「安全&不味くなる」。
安全な範囲でなるべく低温で調理してます・・・今のところ生きてます(^^;
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ベーコンの仕込み

※6kg作るときの手順です。
事前にお肉屋さんにバラ肉のブロックを注文しておきます(スーパーなどにもブロックの切り出しをしてくれる店舗があるので、電話で聞いてみて下さい)。
※私の家から車で30分ほどのところに、白金豚の高源精麦があり、ここの事務所に前日に注文を出すと、チョー新鮮なブロック肉を揃えておいてもらえます。
以下は大まかな作業の流れです。
  1. 肉の下漬け。
    塩を濃くまぶして、一晩冷蔵庫で寝かせます。
  2. 塩抜きしてから本漬け。
    野菜や香辛料を入れて、冷蔵庫で一週間ほど寝かせます。
  3. 塩抜きしてから燻煙をかけます。
    5~6時間ほど燻煙すると、おいしくなります。
  4. 最後にパッキング。

道具の準備

肉の処理の前に、下漬に使う道具の消毒や、置き場所の確保をしておきます。
ナベ、バット、お盆、包丁、アルコール、ブランデー、塩、タオル、ペーパータオルなどです。
肉も取り出しやすいようにパックを開けておきます。

「肉を触った手でほかを触らない、ほかを触った手で肉に触らない」のが大事です。
冷蔵庫とは言え、下漬期間が一週間ほどあるので気を遣ってやって下さい。
また燻煙時も高温にしないので、とにかく菌を減らすことに留意します。

手や器具類にアルコールをスプレーし、ペーパータオルで拭き取ります。
以降は、肉とアルコール消毒したものしか触れません。

先に準備しておかないと、何度も手を洗うことになり手間が増えちゃいます。

.下漬け

肉を良く見て、血管などがあれば取り除きます。
血液が残っているとおいしくないです。
たっぷりの塩に漬けることで、肉の周りの菌を殺すとともに、血抜きもできます

バットに塩を敷きます。
肉にブランデーを軽くスプレーして塩をたっぷりとまぶします。

この塩は洗い流してしまうので、安い精製塩で構いません。

鍋やバットなどに入れて冷蔵庫へ。

ラップを乗せてからお盆やお皿で蓋をして重石を乗せる。
6~20時間の下漬けが良いようです。

.本漬け

※調味料は1kgのブロックに対しての量です。
粗塩30g、砂糖5g、胡椒5g
※完成後も冷蔵庫で保管するので希釈塩は使っていません。

翌日、30分ほど塩抜きします(完全に塩を落としてください)。

塩抜きをしてる間にタマネギ・セロリ・ローリエ・胡椒などを刻みます。
タマネギは大型を3個、セロリは適当(葉の方が香りが強いです)。

ジップロックの口を裏返しておきます。

調味料をまぶし、袋に入れます(野菜の水分が多いときは、調味料を多めにします)。

野菜を入れてからブランデーをスプレーし、空気を抜くようにして袋を閉じて本漬け開始。

冷蔵庫で5~7日ほど漬け込みます。

たまにひっくり返して下さい。

.塩抜きと燻煙

必ず大きいお鍋を使います(小さい容器だと塩味がバラつく)。
塩抜きは約1~2時間(水温20℃で75分)。
この塩抜き加減で味が決まるので、一番大事な作業です。
時々端っこを切って、フライパンで焼いて食べて味を確かめます。

塩味は薄目が無難です(薄塩なら燻煙を濃くすることで味を調節できる)。

一週間ほど塩漬けした肉の塩抜き中。

塩抜きが終わったら、肉の水気をペーパータオルなどで拭き取ります。
大体拭き取れたら、続いて乾燥。
私は燻煙との絡みで、ステンレス製の網に挟んでから、扇風機で乾かしてます。
なお網を使う場合は、必ずステンレス製にして下さい(鉄製だと燻煙中に肉に鉄の味が着いてしまいます)。

この状態で扇風機の風に当てます(途中で一度上下を返し、3時間ほどして表面がカリッとすればOK)。

燻煙時の温度設定も、塩の抜き加減と合わせて、とても大事な味の決め手になります。

箱の中で肉は表面から温まるので、いきなり温度を高くすると表面の味が落ちます。
箱温度を最初は50℃にセットして燻煙2時間ほど。
その後で箱温度を70℃にセットして4~6時間スモークチップで燻煙する(薄塩ならチップを多くして木酢を強く利かせる)。
肉の中心温度が65℃になれば完成。スモークウッドは薄味、スモークチップは木酢の利いた濃い味に仕上がります。

私はサーモスタットを使ってますが、無い場合は箱の外から温度計を入れて確認します。
更に肉の中心部分にも温度計を挿して、65℃近辺になったら加熱は終わりです。
中心温度は低い方が味が良いです(人に配ったり売ったりする場合は、やや高めの温度にする方が無難)。

サーモスタットを50℃ほどにして燻煙を開始します。肉の中心温度を上げすぎないのが旨さの秘訣。

箱の外から肉の中心部に挿してる温度計。私は60℃ぐらいが旨いです。65℃にするのは勿体ない。

.パッキング

肉の内部温度が60~65℃になったら燻煙終了。
この内部温度が低いほど旨いのは確かですが、下漬時の気の配り方や、肉本来の問題などもあり、ここは例の「自己責任」ってやつで、味をとるか安全をとるかご自分で決めて下さい。
ちなみに私は60~62℃が好きです。

これで3kgです(1kgブロック3個を半分に割った状態)。

脂身が旨いです!

まずはできたてを頂きます。
フライパンで軽く焼く。
当然ビール(^^;

一晩おいて、味が落ち着いたのもまた良し。

友人に送ったり、保存するために真空パックしています。

ロースハム

※4kg作る時の手順です。
ロースハムもとてもおいしいです。
ロース肉はデリケートなので、ベーコンより丁寧に扱います。
香料も強く効かせずに「肉の味」を味わいます。ベーコン用の肉はアメリカ産でもオーストラリア産でも良いけど、ハム用のロースだけは白金豚を使う方が良いです。
きめの細かさや油の軽さが丸っきり違います・・・これ、ホント。
  1. 肉の下漬け。
    塩を濃くまぶして、4時間ほど冷蔵庫で寝かせます。
  2. 塩抜きしてから本漬け。
    使うのは塩とブランデーだけです。
  3. 塩抜きしてから布でくるんで乾燥。
  4. 5~6時間ほど燻煙します。
  5. お湯で茹でます。

.下漬け

前準備や下漬の手順はベーコンと同じです。
肉を発注し、事前に道具を準備しておきます。
下漬けは4時間ほどで終えます(ベーコンのように長く漬けると、ロース肉のおいしい成分が逃げてしまうので、短めにします)。

ある程度、大きい方が作りやすいです。
今回は2kgブロックを2個使ってます。

ベーコンと同じように濃い塩で漬けます。下漬けは4時間ほど。

.本漬け

※調味料は2kgのブロックに対しての量です。
塩60g、砂糖10g、胡椒10g、ローリエとブランデー適量

塩抜きを30分したら、キッチンペーパーで水気を拭き、調味料をまぶして袋に入れます。
ブランデーを入れ、真空パック機で軽く空気を抜いてパック。
冷蔵庫に入れて肉と同じぐらいの重さの重石をします。
※野菜を使わず、調味料とブランデーだけなので、味が回りやすいように真空パック用の袋を使ってます。

真空パックの袋だと、調味料やブランデーが満遍なく回ります。

.塩抜きと乾燥

まず塩抜きです。
気温20~30℃の時で、3時間ほど塩抜きしてます(水温が低い場合は、最初だけぬるま湯で塩抜き)。
ロース肉は塩が入りにくいので、ベーコンほど気にしなくても大丈夫です。
ハムの場合は途中で味見をせず、3時間の塩抜きをしていますが、これで良いようです。

塩抜きには大きい鍋を使って下さい。
小さいと味にばらつきが出ます。

続いてサラシで巻いて乾燥の工程です。
塩抜きの終わったロース肉をキッチンペーパーで拭いて水気をざっと取ります。
その後でサラシで巻いて乾燥させます。

本漬け後の肉です。少し締まります。

水気を切った肉をサラシで巻く。
片側を糸で停めたら、手で振り回して肉が詰まるように(太くなるように)する。
ハムは太い方が旨いです!

反対側の処理。
更にタコ糸を肉側に食い込むように巻く。こうすると肉が中心に寄って太くなる。

全体をタコ糸で絞めていく。
最初は軽く巻く(肉の偏りを防ぐ)。
ある程度巻いたら軍手をして力一杯巻く。肉を向こうに押すようにして巻くと力が入る。

巻き終わったら扇風機で風乾3時間ほど。
水分が残っていると燻煙が入りにくいので、肉の表面が乾くまで干して下さい。

.燻煙

燻煙します。
ハムは軽い燻煙も旨いので、スモークウッドとチップを好みで使い分けて下さい。どちらもおいしいです。
燻煙する時間もお好み次第。
私は箱の温度を50℃にセットし、燻煙時間は4時間ほどです(肉の中心温度は40~45℃でした)。

この時はチップを使っています。

.茹でる

最後にお湯でボイルします。
大事なのは「湯温をゆっくり上げていく」です。
肉は「高温にすると安全&不味くなる」、低温だと「危険&おいしい」の法則です。
お湯の温度をゆっくり上昇させることで、肉の外側も内側も同じようにゆっくりと暖め、全体をおいしく仕上げます。
私は肉の中心温度のリミットは62℃にしていますが、危険だと思うならもっと温度を上げて下さい(白金豚ならもっと温度下げても平気と思ってます)。

お湯と肉の中心に温度計を挿して、両者の温度差があまり開かないようにしてボイルします。こうすることで肉の表面と中心を同じようにボイルできます。
お湯をかき回すのも忘れずに。
今なら低温調理器を使うのも良いと思います。

このシットリ感。
薄く切って手のひらに載せると、手の温度で脂がジワーっと出てきます。
燻煙の香りとともに、これぞ最高のハムでしょう。

これまでの経緯

燻煙箱

初代はドラム缶で作ってました
ドラム缶でのベーコン作りは難しくて、さっさと諦めました。
次の燻煙箱はダンボール箱、続いてベニヤ板の45cm角の箱でした。
300Wの電熱器で加熱し、スモークウッドで煙出しをしています。

これでも文句は無かったのですが、一度に6kg作るようになったので、この箱の高さを2倍にしました。
電熱器も600Wにし、スモークウッドとチップの両方にしました。
これで安定して作れるようになり、現在まで続いてます。

ドラム缶 → ダンボール箱

初代のドラム缶です。
ドラム缶の下の方をグラインダーで四角く切り、切った破片を蓋にします。
ここに桜の木の枝をいれて燃やしてました。
丁度良い煙の出加減に調節するのが難しく、しかも温度も調節しにくく、これは直ぐにお役御免になりました。

倉庫に置いてあったので、もしかしたら100年前ぐらいのドラム缶かも?

次はダンボール箱。
そこらに転がってた箱です。
燃えないように見張るのが大変なので、スモークウッドを使ってました。
スモークウッドと完成品のベーコンです。
ベーコンはフライパンで炒めるとぐっと香りが出ます。

ベニヤの箱製

ダンボール箱でも割と普通にできていたんですが、温度調節や空気の調節がしにくいんで、ベニヤ板で作り直しました。
ベーコンは70~80℃ほどの温度を維持すれば、数時間で完成します。
この頃も未だスモークウッドを使っていました。

箱が新しいと匂いがあるので、肉を入れずに加熱+煙で空だきしてから使います。

ベニヤの箱製の完成品

ベーコンを一度に6kg作るようになったら、今までの45cm角の箱じゃ小さすぎるので、縦を倍の90cmに延ばした箱を新規作成しました

ところで箱が大きい方がおいしくできるんです・・・これ不思議。
体積があるから温度が安定する?煙の回りが柔らかくなる?
理由は分かりませんが、箱は大きい方が確実においしいベーコンになります。
また箱が大きくなったので、電熱器を600Wにし、スモークウッドをやめてチップをメインに燃やすことにしました。

この頃は中華製の電熱器を使っていましたが、直ぐ錆びてしまうので電熱器も自作することになりました。

上に載っているのは温度センサーです。

右上の横から挿してる温度計は、肉の中心温度を測るためです。

5時間も6時間も箱につきっきりで見張るのも大変なので、温度センサーを作りました。

煙の様子が見えるようにガラス窓を追加しました。
ついでに空気取り入れ口も追加。
箱の外側の発泡スチロールが無いと、ここ(岩手県中部)では冬場に箱内温度が70℃に達しません。

使い込んでるんで、あちこちボロボロですが、まだまだ使う(^^;

ヒーター

久しぶりにベーコンを作ろうとしたら、中華製のヒーターがぶっ壊れてました。
燻煙に含まれる木酢でニクロム線や金属部品が腐っちゃった。
ニクロム線だけ交換しようかとも思ったけど、全体的にあちこち錆びて穴が空いてるんで全交換に決定。
試しにニクロム線よりも丈夫なシーズヒーターのコンロを買ってみた。大火力の1Kwがたったの1400円。
試しに使ったら、燻煙箱の温度が50℃になる前に勝手に電源が切れちゃいます。
分解して中を見たらバイメタルの温度スイッチが入ってた・・今時バイメタル・・さすがは中国。
バイメタルをバイパスして電源とヒーターを直結。
これで例え火事になってもヒーターは消えまっせん(^^;

1400円のヒーターです。これを1400円で売り出せるって凄い事ですよね。

んま、結局は自作することにしました。
強烈な燻煙の木酢に晒されるヒーターなんで、やっぱなんか心配なんです。
5時間も6時間もずっと燻煙箱の前に居たくないけど、でもやっぱりヒーターの加熱が心配で離れられない。
ヒーターに関しては前からず~っとず~っと気になってて、なんか良いのがないかなと思ってたけど、思いついたです。
耐熱性に優れ、ニクロム線を簡単に交換可能で、木酢にも強い、そんなヒーターを思いついたです。
んで、作ったです。

ホムセンで熱伝導度の低い穴あきの煉瓦を2個と、木酢で錆びないようにステレンスのボルトを買ってきた。
600Wのニクロム線も買ってきた。
壊れたヒーターから取り出したニクロム線の入る焼き物を利用する。

元々は300Wのニクロム線を2本使うヒーターだったんだけど、300Wのニクロム線はあまりに細くて弱々しい。これじゃ簡単に錆びて切れてしまいます。
ちゅうことで600Wのニクロム線を使うことにした・・・こんなに太さが違う。

ニクロム線をそのまま電源線に結んじゃうと熱でヤバイ。まずは長目の銅線に繋いで熱が電源線に伝わらないようにしてます。
ニクロム線はハンダが使えないんで、ぐちぐち巻いてペンチで潰した・・・いかにもの素人作業(^^;
でもこれでもニクロム線の交換は難しくないです。

600Wのニクロム線を回したところ。
かなり張り気味にしないと、電気を流すとゆるんじゃうのだ。
 パッチパチに張ってます。

ニクロム線を煉瓦2個の合わせ目に通し、繋いだ銅線を引っ張った。
 銅線に壊れたコタツから取り出した耐熱チューブを被せた。白くてカッコ良い。耐熱チューブを半田ごてで加熱してみたけど、この程度の温度じゃ全くへこたれないです。エライ。
最後に2個の煉瓦をステンレスのボルトで繋いだ。

ニクロム線からの熱が伝わらないように、銅線はかなり長目です。
煉瓦の下の方の穴から電源線を通し、銅線にハンダ付けして反対側から引っ張る。

反対側から引っ張って結んだ。

電源ON!
カッコイイ~!!
これならナンボ熱くなっても心配なし。
しかもニクロム線さえ交換すれば100年でも使えるはず。
こう言う長持ちモンってなんか嬉しいですよね~

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